古い名もなきアンプ

☆パイオニア/A-570

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1980年発売。丁度40年前のプリメインアンプ。価格は59,800円で、当時としても普及価格帯のアンプである。このアンプはかなり特異な製品で、他に似たものがあまりない。

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それまで70年代のパイオニアアンプは、極めてオーソドックスなアンプデザインで、特に特徴のあるものではなかった。しかし、このA-570はそれまでのデザインを一新し、メカっぽさを排し、インテリアに溶け込むような落ち着いた佇まいを持たせたのだ。

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79年のオイルショックを受けて各メーカーはコストダウンを迫られ、ハイテク化を通してなんとか切り抜けようと藻掻いていたのだった。そんな中、598という売れ筋価格に投入された。もっとも、ただコストダウンしただけなら安普請のアンプということになってしまうので、別の価値を投入したのであった。デザインもさることながら、トランジスタに”RET”(Ring Emitter Transistor)という高域特性のすぐれた集団トランジスタを使用し、ワイドレンジ化に対応したのだ。これはこのクラスのアンプには過ぎた素子で、その大人しいデザインの裏で実はかなりのポテンシャルを有した製品になっていた。

ところが、当時の評論家には一部を除いてあまり高い評価は得られなかった。というのは、評論家というのは往々にしてHi-Fi指向で、よく言えば透明でフラットな音、悪く言えば薄くてサラサラした音を高評価し、このアンプのような濃厚な、エロスを感じさせる音は敬遠する傾向があった。長岡氏だけは素子による質感の良さを評価していたように記憶しているが、他の評者はそれなりの評価はしていたものの、あまり高い点数は付けなかった。

それと、評者によってかなり違う評価で、長岡氏は「繊細でシャープに切れ込んで透明感がある」というのに対し、瀬川冬樹氏は「ソフト&メロウ」と正反対であった。また、傳信幸氏は「ガッツ・サウンド」と評していた、やはり、使用機材や使用ソフトの違いによるところが大きいと言えるが、それぞれの音質感覚やオーディオ観の違いによるのだろう。それでも、価格比で割と高い評価であることは共通している。

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筆者は25年ほど前に中古でこのアンプを購入し使ってみた。それまで使っていたサンスイやケンウッド、テクニクスとはあまりに違う音質なのであった。また、70年代のパイオニア(SA-8800系)とも違い,更に80年代中期のパイオニア(A-100・120・150系)とも全然違うので驚いたのを憶えている。つまりこの製品は突然変異的な製品で、ワン&オンリーということになる。弟分の"A-470"という似た製品があるのみで、後継機は"A-580"という全く別物のアンプである。

しばらく使ってみて故障したので処分したのだが、ある種、忘れられないアンプの一つとなっていた。ところが最近、ヤフオクで見付けて落札(他の入札者無し)し、ほぼ20年ぶりに再会したのであった。

そこで、このアンプの印象を記してみることにする。

●ライン入力(CD&カセットデッキで視聴)

電源オンして聴き出した瞬間は、やはりやや古い系統の音だ。とても暖か味があって少し華麗な感じである。ウォーム&ブリリアントと言うべきか。ともかく、今では珍しい音質傾向であり、オーディオというよりステレオと言ったほうがよい感じで、ソースを上手く加工して聴き手を気持ちよくさせる演出を感じる。質感は大変良く一級のものだ。しかし、色々と聴いていくとともにそういった個性・クセも取れてきて、かなりスッキリとしてくる。中高音の若干の輝かしい艶と低域の落ち着いたやや重い傾向は残るものの、オーディオ製品としての総合力が高く、音楽の説得力が高い。今日のクール・ハイレスポンス・クリアリティ系の音質とは異なるものの、人間味のある音質に惹かれる。

もっとも、上記の傾向ばかりではない部分もある。ボーカル帯域のある部分にはしっとり感というより、むしろドライでかすれた感じが若干あり、これがロックなどを聴くときにある種の生々しい迫力となっている。これもこの製品の不思議な魅力の一つ。

●フォノ入力(レコード/MMカートリッジ)

598のアンプなのでイコライザーはそれほど高価なものは入っていないはずだが、実際聴いてみると結構いい。低域は厚く、躍動的というよりは落ち着きがあり、これが安心感につながっている。一方、中高域は輝かしさを秘めた表現となっており、バランス的には大人っぽい雰囲気に支配されているが、その中に尖った要素もあり面白い。このため、ロックやポップスも保守的にならずに楽しく聴ける。一方、その大人っぽい要素はクラシックに魅力を発揮できそうだ。特にオペラがよい。爽やかさよりも濃厚なロマンを感じさせる表現はなかなか得がたいものだ。Hi-Fi指向のアンプだと、音場が物理空間として感じられるのだが、このアンプは音場がイメージ空間として表出されるので、オペラ的世界に没入できる。

音質的には”和風”ではない。色が濃く、ややしつこいところが”洋風”と言えそうだ。絵画で言うと印象派というよりはロマン派に近いものを感じる。部屋の電気を暗くすると、表示イルミネーションがいい雰囲気を醸し出す。

●総合評価

やはり面白い魅力を持ったアンプであることは間違いない。ほんとにこういう音質の製品が無くなってしまって残念だと思う。物理特性の良さを音質の言い訳にしているようなオーディオはつまらないなとつくづく思う。
MCカートリッジも使えるので、そのうちテストするつもりでいる。

 

レコードプレーヤー~70年代後半④

☆SL-71D/DENON

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1976年頃の製品。価格は42,800円で重量8.8kgのDDプレーヤー。デンオンのプレーヤーと言えば”DPシリーズ”が定番だが、これはそこから外れた異端のプレーヤーだ。他にこれと同じ”SLシリーズ”があるらしいが、筆者は見たことがない。ヤフオクでたまたま見かけて、そのデンオンらしからぬデザインに惹かれて落札したのであった(かなり安価で)。やや古めかしいメカニックさがあり、ソニーやテクニクスほどカッコよくはないが、どこか不思議な落ち着きがあって飽きない。

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回転数ストロボは、少し大袈裟で厳ついデザイン。あまり洗練されていないのがむしろ面白い。回転はACサーボモーターで制御されている。

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操作系は銀のプレートの上に纏められており、判りやすい。プラスねじがアクセントになっていてカッコいい。

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アームはS字のブラックで、これは硬質アルマナイト加工となっている。アーム基盤はそれほど高価なものとは思えないが。とても洗練されたデザインで美しい。

ところで音質なのだが、これはよい誤算なのであった。作った感じ、演出されたようなところが全くなくて、端正かつ力強い。特に低域の質が高く、曖昧になったり妙に膨らんだりしないHi-Fi調で素晴らしい。このため、直接音と間接音がキレイに分離した上で溶け合う感じが高級機並みである。思うに、こんな優れた製品が目立たなく当たり前にあった70年代は、やはりオーディオ黄金時代と言ってよいのだろう。


レコードプレーヤー~70年代後半③

☆オーレックス/SR-255

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これは1976年発売の珍しいプレーヤーです。何しろ”オーレックス”なのですから。今となっては伝説的な東芝の70年代のオーディオブランドですが、最近になってCDラジカセとしてブランド名が甦っています。

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オーレックスの製品は基本性能がとてもよく、音質もしっかりとした硬派のイメージでした。筆者は特にそのデザインを高く買っていました。他のオーディオ製品にはない、地味ですが高級感のある渋いテイストがあったのです。アンプでいうと ”SB-420” などはその代表です。

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このプレーヤーはオーレックスの製品の中でも秀逸のデザインだと思います。実にシンプルでスッキリとしたもので、それほど高価ではないものの、格調高さが感じられます。大理石テイストの質感が高級さを醸し出しています。実際には、東芝が開発した合成樹脂でADソリッドと呼ばれています。

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音質は本格的で、特に演出したような要素はなく、レコードに入っている音をストレートに再生します。素っ気ないくらいに正直な音です。だから、録音の欠点もリアルに出してしまうところがあります。筆者が今までに聴いたプレーヤーの中では、これほど音作りのない、飾り気のない音を出すものは有りませんでした。優れた高級機でも、よく聴くとそのメーカーの美意識というのか、薄化粧的な音作りがなされているのですが、SR-255にはそういった要素は皆無です。

一つだけ特徴を言うと、これは東芝(オーレックス)の機械に共通しているのですが、高音域のある部分で音が割れるような雑味が感じられることです。それがある種の迫力を出しているようにも感じられるのですが、ややもすると、音の優しさ・柔らかさを棄損しているようにも受け取られるのです。この点が、オーレックスの音にリッチさをあまり感じない理由かもしれません。

ともかく、聴く側の骨に響くようなある種の強靭さを持ち合わせた名プレーヤーだと思います。


レコードプレーヤー~70年代後半②

☆PS-X6/ソニー

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これはソニーの1977年製品です。この頃は、各社が従来からの木目調のデザインのプレーヤーから脱却しようと必死になっていた時期でした。シルバーやブラックのアルミダイキャストのモダンなプレーヤーが次々と生まれました。ソニーも前年に PS-4300 というグリ-ングレー色のプレーヤーを発表していました。しっかりとしたプレーヤーでしたが、イマイチ話題にはならなかったと思います。冴えない色が要因だったのかもしれません。そして翌年、この PS-X6 の登場です。実を言うと、デザインはほとんど PS-4300 と同じなのですが、とにかくつや消しのブラックのモダンで精悍なイメージが格好良かったわけです。ソニーの先進的なイメージともピッタリ合っていました。

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性能はソニーらしく先端技術が盛り込まれており、この頃のハイテク戦争が如何に激しかったか伺わせます。
回転の正確性を保証するスロットレスモーター、クリスタルロック(水晶発振)制御、キャビネットは内部損失の大きいSBMC一体成形、インシュレーターはゲル状高粘性物質を充填しハウリングを防止しています。

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トーンアームは高感度で支持部は亜鉛ダイキャストアームベースに固定。
カートリッジは定評のあるXL-15を装備。

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操作系はオート化されており、ルミナスセンサーリターン方式が採用されています。
その他、厚手特殊ゴムシートにより密着性・振動吸収性の向上が図られています。

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さて、実際使ってみて感じるのは、すごくメカニックでカッコいい反面、ややゴツイ印象であまり操作性はよくはありません。SL-1600の使い勝手のよさとはかけ離れています。使い慣れれば気にならなくなりますが、メカとしての優秀性に反して手になじむようなプレーヤーではありません。というか、如何にSL-1600の人間工学的な造りが素晴らしいかが分かります。ここら辺が、プレーヤーに関してはソニーがテクニクスに最後まで勝てなかった理由かもしれません。もっとも、そのことがCDプレーヤー開発に繋がっていったのかもしれませんが。。。

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音質傾向は割と弾力があり、鋭角的ではなく全体を包むような雰囲気があります。音の悪いレコードでもこのプレーヤーのうまい演出によって気持ちよく聴ける感じです。おそらくXL-15によるところが大きいのでしょうが、リアルなハイファイというよりも、あくまでレコード音楽としての楽しさを追求した音質です。

ともかく、このプレーヤーの魅力はその見た目のメカニックなカッコよさです。近年になってアナログのよさが見直されて、プレーヤーの新製品も発売されていますが、レトロ調が多くそれなりに落ち着いていていいのですが、このPS-X6のようなグッドデザインのものはないのが残念です。

レコードプレーヤー~70年代後半

☆SL-1600/テクニクス

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1976年発売のテクニクスのベストセラープレーヤーです。一機種にこれだけ機能を盛り込んだ製品はないのではないのでしょうか? ある意味テンコ盛りなのですが、往時のテクニクスの勢いを感じます。

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ダイレクトドライブは勿論のこと、フルオートチェンジ、オートスタート、オートリターン、メモリーリピートなどの自動機能に始まり、フローティングメカニズムによる外部振動・共振の防止。技術的にも、B-FGサーボのブラシレスDCモーター、ワンチップICによる駆動系一括制御に加え、ジンバルサスペンション方式トーンアームの採用、等々。これでもかと言っていいくらいに思いつく限りの技術を詰め込んでいます。やや総花的な感じもしますが、セールスにはこういった謳い文句は絶大な威力があったはずです。結果、カッコいいデザインとも相まってベストセラーになりました。

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実際に使ってみて分かるのですが、実に違和感なく感覚的にスムーズに使える製品でした。というより、これほど使い易いプレーヤーはないのではないかと思うのです。他のプレーヤーも随分と使いましたが、SL-1600に優るものは有りませんでした。サウンドは歯切れよく、さっぱりすっきりしたものです。適度な明るさとツヤがあり、オールラウンドにどんな音楽でも生き生きと聴かせてくれます。特にポップス・ロック系にはマッチしていて、オーディオ的快感があります。ジャズやクラシックなどの生系の音楽はやや濃厚さ、奥行き、深みなどがあっさりとしていて表面的になりがちですが、カートリッジやフォノイコでカバー出来ます。

それと、特筆したいのは針圧調整です。これほど調整がやり易いプレーヤーも無いのです。これに慣れてしまうと、他のプレーヤーを使ったときに何ともいえない煩わしさを感じるのです。

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筆者の場合は、SL-1600→SX-737→M6という組み合わせがオーディオの原点になりました。それほどこの組み合わせは相性がバツグンでした。SL-1600の歯切れのよいスカッとした音に、SX-737の色気が加わり、M6の爽快なダイナミズムで音楽が濃厚に伝わりました。

これは2代目ですが、日常的に使用しているのは今でもこのSL-1600です。

アナログ全盛期~デジタル登場へ

デジタル時代は、一般的には1982年のCDプレーヤーの発売から始まったと言われています。ちょうどその年の秋に開かれた”オーディオ・フェア”にて、各社から発売されたばかりのDAD(デジタル・オーディオ・ディスク)、つまりCD(コンパクト・ディスク)の再生プレーヤーが競うように展示されていました。もっとも、前年のオーディオ・フェアからすでにプロトタイプが展示されていたので、それ程目新しく感じたわけではありません。しかし、いよいよ発売ということになり、仰々しいまでのプロパガンダ的な展示となっていたのです。 

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CDP-101

そして、何といってもCDの創案者で推進役のSONYの展示が群を抜いていました。筆者も早速このCDP-101で聴いたわけですが、ソフトは、当時発売されたばかりの、”マイケル・ジャクソン/スリラー”でした。冒頭の”ダンダン・シュトゥトゥンタントンターター”の衝撃はすごいものでした。これぞデジタル・サウンドという感じで,新しい時代の息吹を感じたわけです。

CDPと同時に新シリーズカセットデッキも展示されていました。CDPと同じ台にセッティングされていて、CD”スリラー”からカセットにダビングしたものが聴けました。表示に「CDサウンドをほぼ完全にコピーできるデッキ」といった文句が踊っていました。その文句通り、ヘッドフォン(MDR-CD5)で聴くサウンドはCDそのものだったのを憶えています。

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TC-K555ES

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MDR-CD5

デジタルの話題で持ちきりだったこの頃、しかしアナログも負けてはいませんでした。というより、アナログは70年代後半からデジタル登場まで、その性能に於いて最高潮に達していたのです。比較視聴ではCDより優るものが多かったのです。

これからその時代のアナログ・プレーヤーを紹介していきます。普及価格帯の製品ですが、何れも力の入ったものばかりです。


カセットデッキの面白さ⑤

☆TEAC/V-2RXの場末的な魅力

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この製品はWebのオークションで初めて知りました。初見ですぐに気に入りました。何か惹きつけられたのです。どこということもないのですが、なんか場末のスナックに置いてあるカラオケ(1980年頃の)の機械のように感じたのです。

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TEACの製品は若者より中年、つまり、酒もタバコもやり、クラブにも通う男のためのデザイン・雰囲気を醸し出しています。清新で希望に溢れた青年のそれではありません。実生活に根差し、狡猾になった男のための道具。カッコいいイメージではなく、必要な性能を高度に、密やかに備えたデッキ。

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ノイズリダクションはドルビーのほかに"dbx"がさりげなく搭載されているのです。テープのバイアス・感度もしっかり出来ます。

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フロントパネルの色も、鈍色などをさりげなく使い、只者ではないことを示しています。
音質はフレッシュというより、力を秘めた熟成を感じさせるものです。好きになると病みつきになる音かもしれません。こういう質感はSONYVictorPioneerには出せないものです。AKAIもそうですが、国内より海外で評価が高いのも頷けます。

カセットデッキの面白さ④

☆レトロ実力機 GXC-715D の魅力

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これは1979年発売のAKAIの製品です。オーディオの名鑑にもあまり載っていないので、ある意味無名の機種ですが、不思議な魅力があるので紹介します。

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AKAIはテープデッキの名門で、日本よりむしろ海外(特にアメリカ)で根強い人気のあるメーカーでした。80年代半ばからはダイヤトーン(三菱)と提携してA&Dというブランドで気を吐いていました。しかし、オーディオ環境の変化に付いていけず消滅していきましたが、その製品の魅力は今でも一部の人には伝わっています。

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このテープデッキは欧米でベストセラーであったそうですが、音質を聴くとうなづける側面があります。なにか、別の世界に連れて行ってくれるような、少しファンタジー的な魅力があるのです。ソニー的なリアルで直接的な音とは違う、なんとも言えない、どこか懐かしさを感じさせる、ある種の魔力があるのです。

オーディオは原音再生がその使命ですが、それだけではない要素も必要であることを考えさせられるデッキなのです。

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操作音がガチャンガチャンと少しうるさいのは時代でしょうか。それでも、操作表示はカラフルでとてもキレイです。デザインは全体的にはごっついもので、今ではほとんどない立体的なものです。VUメーター、機械式カウンター、機械式各種スウィッチなど、その造形と操作の楽しみがあるのが嬉しいです。

芳醇なワインを感じさせる GXC-715D に乾杯!

カセットデッキの面白さ③

TC-FX600の秘めた実力

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これは型番や価格からして、1980年に出たTC-FX6とそれに続くTC-FX66の後継機種ということでしょう。ただし、FX66までは”S&F”ヘッドでしたが、この機種は”レーザーアモルファス”ヘッドとなり、上級のESシリーズと同系統の仕様となりました。正に、トリプルナンバー・シリーズが始まると同時に発売された機種であるわけです。ある種、廉価版といった位置付けかもしれません。しかし、内容を見てみると決して引けを取っていないといえます。

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実際、ESシリーズ(222・333)などと比べても音質差は特に感じません。むしろこちらのほうがシャキッとしたソニーらしい音に思えます。デザインが大人しいので損をした機種かもしれません。実は非常に素性の良いテープデッキなのです。そして何より、”シングルキャプスタン”というのが良いのです。ESシリーズは、”デュアルキャプスタン”が売りで、これはオープンリールデッキのメカニズムと同じという、ある種のステイタスを謳っていましたが、使ってみると必ずしも良くないのです。つまり、よくテープが絡まるのです。何本貴重なテープをダメにしたか分かりません。おそらく、左右のキャプスタンのテンションが微妙に違うので、その誤差がテープ走行に影響を及ぼすのかもしれません。これがシングルキャプスタンだと、メカが単純なので起こりにくいのでしょう。筆者が使ったテープデッキで、シングルのものはどれもとてもよくできていました。

画像 1534.jpgデュアルキャプスタン(K222ESG)

画像 1533.jpgシングルキャプスタン(FX600)

カセットデッキの面白さ②

TC-K222ESG の完成度

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1989年の製品。80年代初頭から続いてきたトリプルナンバー・シリーズが成熟して、ついにここまでの完成度になったかという感じです。実はこれは後に手に入れたもので、最初に購入した222はTC-K222ESA でした。ほとんど同じデザインでしたが、この222ESG はどこか操作ボタンの配置がCDプレーヤー的で、やや使いにくいものでした。222ESA はというと、実に使い易いデザインで、操作するのが楽しかったのを憶えています。

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音質は上級機種の333・555などと遜色なく、厚みはやや欠けていましたが、実に素性の言いピュアな音質で気に入っていたのです。この222ESG もほとんど同じでした。何というか、カセットデッキの完成形を見ているような感じです。これ以上どう進化するのだろうかというくらいのモノでした。大袈裟に言うと、日本の工業製品のある種の到達点のようにさえ思えたのです。

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優れた製品でしたが、好みからいうとTC-FX6 のほうが気に入っていました。どこか面白いというか、生成途上の尖った感じが好きでした。


カセットデッキの面白さ①

TC-FX6 のカッコよさ

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この頃(1980年)のソニーは圧倒的でした。性能もそうですが、特にデザインにおいて他の追従を許しませんでした。オーディオ御三家(サン・トリ・パイ)は保守的で重厚な古めかしいデザインで、あまりパッとしないものでした。ソニーだけ異質だったわけです。唯一、テクニクス(松下)がソニーの新機軸を真似たデザインを出してきましたが、真似て負けていました。

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この製品以降、カセットデッキのデザインは変わります。薄型の未来型になっていきます。デジタルメーターは当たり前、フェザータッチのボタン系、機械式は姿を消します。選曲もコンピューター制御に。

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スライド式のレベルメーターも円→角への時代の幕開けでした。

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そして1981年以降、ソニーの有名なトリプルナンバー・シリーズが始まります。555・666・777から始まって、444・333・222とラインナップが増えていきます。アンプ・チューナー・CDプレーヤーと広がります。ソニーブランドの黄金時代でした。


オーディオの妖しい魅力③

デジタルメーターは?

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KT-770

これはデジタルシンセサイザー・チューナーの表示です。1983年のトリオの製品です。やはりアナログのものと比べてどこかクールというのか寂しい印象があります。ただ分かればいいといった素っ気なさが感じられます。あのムードに溢れた夢のあるメーターはどこへ行ってしまったのでしょうか? 

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TC-K222ESG

これは1989年のソニーのカセットデッキです。確かにかっこいいですが、やはりムードや夢はありません。冷たく光るといった印象で、性能の良さは連想できますが、イメージは湧きません。

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TC-FX6

これはどうでしょうか? 
デジタル表示でありながら、割と面白いと思います。どこかファンタジーがあります。ソニーの1980年の製品で、当時としては画期的なデザインでした。それまでのかなり大型で立派な、ある意味威圧感のあるような70年代デザインから脱却し始めた製品なのでした。それでもどこか夢や温かさがあって良いのです。

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TC-FX6


オーディオの妖しい魅力②

☆メーターもいい雰囲気

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E-302

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TC-4300SD

はたしてオーディオ製品においてメーターとはどんな意味があるのだろう?という疑問が浮かびます。
もちろん、レコーダーにおいては入力レベルを見るための役割があるのは当然です。でも、再生中のメーターはどうでしょう? 特に必要なものではありません。一種のデモンストレーションというか、デザイン上の遊びの要素が大きいと思います。特にアンプにおいてはそうです。

E-302 はアキュフェーズ社のプリメインで、1984年の製品です。当時はCDが隆盛となってきて、アンプもその対応でアナログ(フォノイコライザー)は少しずつ疎んじられてきたのですが、この製品はむしろかなりの力をアナログにつぎ込んでいます。MC対応はロード切り替えができて本格的です。
デザインも若者受けを狙ったものではなく、ある意味保守的で、従来からプリメインに求められてきた機能を合理的にまとめてあります。メーターは黒のプレートに電球色のライトがポッと灯される感じで雰囲気がいい。文字レゴは草色で高級感がある。

TC-4300SDは前にも紹介しましたが、70年代らしくアナログVUメーターがいい感じです。イエローオーカーのプレートに電球色のライト、下向きの針がかっこいいです。その後のデジタル式のメーターは分りやすいですが、チャカチャカとしてあまり高級感がありません。目も疲れます。



オーディオの妖しい魅力①

☆暗い部屋の中で・・・

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SX-737

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ST-5150

これが昔(70年代前半)のオーディオ・チューナーの画像です。いい雰囲気が出ています。なにか夢の中に引っ張られるような気になります。ダイアルスケールがブルーグリーンが普通でした。その他、草色オレンジ系もありました。また、電球色のライトもありました。

ともかく、各メーカーともムードを出そうと必死でした。このデザイン傾向は、やはりデジタルが登場した頃から変わっていきました。もっとクールで無機的なものになってしまったのです。

暗くした部屋の中で、ステレオファンはムードミュージックやロマンティックなクラシックなどを聴いて恍惚としていたのです。こういう夢想が広がる世界はとても重要なメンタル体験ではなかったのではないでしょうか?

オーディオの別の魅力とは?

サンスイのサウンドの魅力を語ってきましたが、ここで、オーディオの別の魅力も見ていきたいと思います。それは音質そのものより或る意味もっと重要なことかもしれないからです。それは1970年に経験したあることがきっかけになったのでした。

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★1970年の出来事

昭和45年の夏のある日曜日。筆者は父と秋葉原へと赴いたのであった。目的は自宅で使うモジュラー・オーディオ製品を買いに行くためであった。元々、自宅には大型のステレオセット(TRIO製)が鎮座していたのだが、それを家業(客商売)の店舗に移動して、お客にサービスでFMやレコードを聞かせることになったのだ。結果、自宅にステレオが無くなるので、替わりにそのころ流行りだしたモジュラー・オーディオ(小型一体型のステレオ)を購入しようということになったのだ。

大型店の代表ということで、ヤマギワ電気に行ってみた。そして何階か忘れたが、オーディオ売り場に入ってみて驚いたのである。暗い。照明が落としてあり、まるで映画館の中のようであった!

これには理由があった。

当時の一体型(プレーヤー・チューナー・アンプ+スピーカー)ステレオは大人向けの製品で、どういう風に使用されるかというと、”夜、自宅の居間や寝室で部屋をほの暗くして、リラックスしたムードを醸し出して音楽を一人又は二人で聴く”というのが一般的なイメージであった。なので、ステレオ装置は木目調のデザインが多く、特に、暗い部屋でもFM/AMの周波数スケールが見えるように、また、ボリュームやバランスのつまみが分かりやすいように内側からライトで照らしてある必要があったのだ。

それ故ステレオの販売店では、販売コーナーそのものの照明を落とし、暗い部屋の感じを出して客に対して展示していたのである。筆者は父と販売員に連れられ、その暗い中を何と懐中電灯で床を照らされながら案内されたのだ。まるで、上映の途中で入る映画館の案内係のようであった。それほどまでに、当時はステレオのムード性を大事にしていたのであった。

各社は競ってそのムードを出そうとしていた。客も機能や価格よりもそちら、すなわち照明付き家具としてのステレオを求めていたようにすら思う。

何機種か候補にして1時間近く迷った末パイオニア東芝の製品に絞り、結果、東芝に決めたのであった。やはりデザインが決め手であった。

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当時の製品ではないのですが、そういう雰囲気を引き継いだ70年代のオーディオ(ステレオ)をいくつか紹介します。






サンスイを使ってみて

AU-D607Gextra との付き合い

前述した通り607はもってりした音で、初めはあまり好感は持てませんでした。何というか、保守的で面白みのないサウンドに思えたのです。色々聴いてみると、確かに生系の楽器を使った音楽(クラシック・ジャズ)に相性が良いように感じました。質感が高くて雑味がない音質です。

しかし筆者は当時まだ若く、ロックやポップス系の音楽を常食としていたため、もっとメリハリのあるカラフルな音色に惹かれていたのです。そういえば、アンプを比較購入するときに比べた他の製品の中には、そういった傾向の音色を持ったものもあったのです。例えば、ビクターのA-X900やパイオニアのA-120などです。

それらの製品は、ある種耳慣れた音に聞こえました。美味しい音というのでしょうか。
つまり、ある程度色付けされた音質を求めていたのでした。音の演出といってもいいでしょう。要するに、聴いていて楽しければいいわけです。

ところが、AU-D607Gextraはそうではありませんでした。

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音のメリハリはある程度感じましたが、あまり特徴のないサウンドに思えたのです。しかしその印象は徐々に変わっていきました。

●評価の変化

1.レンジの広さ

様々なソフト(カセット、LP、チューナー)で聴いてみると、その地味なサウンドの別の側面が徐々に見えてきました。なんというか、肌理の細かい精細な音質というのでしょうか、各種楽器(特に生楽器)の繊細な表情が実によく表現されているわけです。デフォルメなくサラリとしたその音はとても自然で、これがいわゆるレンジ(F・Dレンジ)の広い音というものであることが分かったわけです。例えば、バッハのヴァイオリン・コンチェルトで、色付けのないヴァイオリンの自然な艶や、合奏のふわりとした低音感などが実によく出るのでした。これが演出の多いアンプだと、トロリと甘い、いかにもヴァイオリンといった音になってしまったり、低音部も単にドンッとくる迫力だけのものだったりするのですが、607はその演出がほとんどないわけです。これは一度分かってしまうと、戻れなくなる音認識でありました。

2.陰影感の表現

また、クラシック音楽の特にロマン派系のものを聴いたとき、607に比してSX-737では確かに美音とカラフルな彩りでそれなりに楽しかったものですが、なんというか、すべてに光が当たっていて影があまりないように感じられたのです。607は”暗さ”が見事に表現されていました。その結果、目立つ部分と背景に退く部分のコントラストにより音の立体感が見事に出てくるのでした。その要素が薄いと、どこか音楽が物足りないものに思えてしまうことも分かったのです。これも一度味わってしまうと、逆戻りが出来ない種類のものでありました。

サンスイのアンプは定評がありましたが、今言ったような要素がその魅力の肝だと感じたものです。筆者も音認識のレベルがここで一段上がったような気になりました。それからは、時々他のアンプ(737以外でも)で聴いても、何か満足感が薄いような気がしたものです。サンスイとの付き合いはその後も続きます。。。

オーディオの”魔力”とは?

これまで笠木氏の評論を紹介してきましたが、どう感じられたでしょうか?
氏の評論はオーディオの非常に重要なところを突いています。それは、再生芸術としてのオーディオの役目は、音楽の持っているある種の魔力を表現することであるということです。いかに正確な再生でも、音楽がつまらなくなってしまってはおしまいです。氏の言う”ミュージックパワー”が損なわれてしまうわけです。前回までの評論で高評価を得た2機種は、何れもサンスイの製品でした。AU-D(607・907)Gextraです。実は筆者はこの607の方を購入したことがあります。販売店で比較した結果の購入でしたが、”サンスイ”というブランドも影響したことは確かです。それまでSX-737(レシーバー)を使っていて、その音が基準になっていたので、初めて本格的プリメイン・アンプの音質に接したわけです。その感想を書いてみようと思います。

AU-D607Gextraを使ってみて(初めてのサンスイ)

1984年の1月に購入して、すぐに今までSX-737の置いてあったところに設置しました。カセットデッキ、アナログ・プレーヤー、スピーカーに接続して音を出しました。ソフトは確か、カセットに録音してあったビートルズの”サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド”だったように思います。夜だったので初めはヘッドフォン(Aurex HR-710)で聴いたわけです。

聴き始めて唖然としました。どこか”おかしい”と思ったのです。それほど、今までに聴いていた音と違うのです。SX-737の、中域が濃くブリリアントで、やや華やかな高音と小気味よい低音の組合せの絶妙な音に慣れた耳には、異質の音に感じられたわけです。なんというか、妙にのっぺりとしていて、躍動感もあまりなく、色彩感も地味でした。要するにつまらない音だったわけです。SX-737のあの美音とは比べるべくもないものでした。

そんなはずはない、どこか間違っているのでは?と思ったくらいです。暫く聴いていてもその印象は変化せず、相変わらず鈍重な音でした。よく言えば、ゆったりとした低音が安定感・安心感を覚える大人の音という感じです。筆者は当時まだ若く、もっと刺激性のある、派手な音を求めていたのでした。

オーディオ誌などでの評価も考慮して購入したのですが、これは失敗したかなと内心思いました。しかし、買ってしまったモノなので付き合っていくしかありません。オーディオ製品は第一印象だけで決めてはいけないとも考えました。それからこのサンスイ607との付き合いが始まっていったのでした。


オーディオ評論いろいろ④

さらに続きます。

☆パイオニア/A-150

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これは70年代から続くかなりごついアンプの一つで、軽薄短小の波に呑まれず物量投入系の製品。大きなトランス、大容量のコンデンサー、立派なヒートシンクの頼もしい構成。音もそういう傾向の評論もあるが、ここではまた笠木氏の独特の評を見ていきましょう。

ソース(LP/CD)「ワインライト」

(LP)<ワインライトではサックスの音色が少し変わる。すなわちややカスレが出る。中音量のバランスは大変良く、これは文句なしってところだ。>

(CD)<ワインライトでは全体が若干低域に引っぱられた感に聴え、この音楽のムーディーさは十分表現されているが一方抜け、歯切れの良さは消えかけている。>

どうでしょうか? これもまた厳しい評です。なにかあまり良くない感じですが、他の評者では全く違った評価になっているので、オーディオ評論というのは難しいものです。それでも、笠木氏の独自のポリシーに基づいた評は貴重です。

☆サンスイ/AU-D907Gextra

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日本のプリメインの代表格の製品。ダイアモンド差動回路に加えて、スーパーFF、グラウンド・フローティング回路などが盛り込まれ、進化し続けてきた歴史がある。個性的なサウンドで好みは分かれる傾向があるが、笠木氏はどう評価するのであろうか。

ソース(LP/CD)「ワイインライト」

(LP)<ワインライトを鳴らした瞬間、フワーとしたその再生音に身も心も包まれるって感じだ。いい音だ。そして音に自然な広がりがある。申し分なしだ。>

(CD)<ワインライトのサックスはNYのライブハウスで聴いたその感じがそっくり出ている。楽器間のバランスが見事で潤いもあり素晴らしいの一語。>

これはかなりの高評価です。文句の付けようがない感じです。もちろんたまたまこのソフトが合ったということもあるのでしょうが、他のソフトでも高評価なので、本製品が優れているのは疑いがないということなのでしょう。では氏の評価の基準とはどういったところにあるのでしょうか。

笠木氏は「テストを終えて」の欄で次のようなことを言っています。

<(製品の)中にはやはり音楽的なまとまりに欠けるものがあった。クォリティに気をとられ音楽を忘れかけているものがあったことだ。 (中略) キーポイイントはミュージックパワーとは何かである。>

そうです! なにより大事なのは”ミュージックパワー”なのです!

これを基準とした評論が実に少ないことはお分かりと思います。そしてミュージックパワーに欠けた製品が溢れてしまうのです。実に残念です。。。

オーディオ評論いろいろ③

☆デンオン/PMA-760

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これは、デンオン(現デノン)のちょっとレトロ的なデザインのアンプです。デジタル時代の幕開けにこのようなレトロデザインの製品を出すというのは不思議な感じもしますが、老舗デンオンらしい自信の現れなのかもしれません。

以下、笠木修治氏評論です。

ソース(LP/CD)「ワインライト」より

(LP)<ワインライトでは低域のソフトさと高域の切れ不足がアンバランスになり、この音楽ソースの味が失われかけているのが残念だ。>

(CD)<ワインライトでは楽器間のバランスがよくとれイージーに聴いたり、小音量で聴くとなかなか良いが、音量を上げると高域は伸び不足を感じる。>

これもかなり手厳しい評価です。ちなみに同時に評論している神崎一雄氏は割と良い評価になっています。ただし、使用ソフトは別のものです。かくも人間の感覚というのは人それぞれということなのでしょうが、ともかく”ワインライト”というソフトを、テストアンプがうまく鳴らせないことにイライラしている感じがとてもよく出ているのがおわかりでしょう。

さてそこで次のアンプの登場です。
どういう評価がされるのでしょうか?

☆サンスイ/AU-D607Gextra

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言わずと知れたサンスイの07シリーズです。初代から数えて5代目の製品です。ブラックフェイスのデザインのベストセラー機です。では評論を見てみます。

ソース(LP/CD)「ワインライト」より

(LP)<ワインライトの持ち味が全部出る。再生音がスワーッと広がる。サックスの音色は抜群だしバスドラムなどには一定の締まりもある。切れ込むという程ではないが素晴らしい音がしている。>

(CD)<ワインライトではやはりサックスの音色の良さ、全体のムードの出し方が光る。ややエコーがつき気味で甘味にはなるが、いい感じの鳴り方だ。>

今までの評論とは一読して違うことが分かります。少し興奮すら感じられます。これは単に評者の好みに合うといったレベルのものではないように思えます。つまりこの製品の音質が素晴らしいということは疑いがないということなのです。他の評者でここまでその差をあからさまに指摘する人はいないと思います。こういう評論が本当は必要なのです。

次の製品に行きましょう。





オーディオ評価いろいろ②

それでは、笠木修治氏の評論をいくつか見ていきましょう。

☆ヤマハ/A-750

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この製品はそのブラックマスクの精悍さと、750(ナナハン)というバイクを彷彿とさせる型番から、とても男性的なイメージを狙ったアンプであることが分かります。だから出てくる音もそのような傾向が想像されますが、実際はどうなのでしょう?

ソース(LP/CD)「ワインライト」より

(LP)<ワインライトでは楽器間のバランスは良いものの、全体に甘味でムーディになり、押し出しが若干良くない再生音である。>

(CD)<ワインライトではLPよりスッキリした感じになり、それなりにメリハリもついてくる。明るさや軽さは出ていないが悪くない再生音だ。>

読んでわかる通り、とても率直で正直な評価になっています。製品の狙いやイメージに囚われることなく、音楽のエッセンスを伝えているかどうかだけで評価しているのがわかるのではないでしょうか。ほめるだけの評論ではなく、むしろ欠点もはっきりと書いてあるのです。

☆オンキョー/A-817RS

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これは80年代初頭から始まった人気シリーズで、白く品のよいパネルの外観が印象に残っています。電源スイッチが透明で、その奥に黄緑の蛍光色で"SUPER SERVO"と浮き出るのと"POWER"のインジケーターがこれまたオレンジの蛍光色で、その組み合わせがとてもキレイだったのを憶えています。

ソース(LP/CD)「ワインライト」より

(LP)<ワインライトではバスドラムやベースがやや甘くなり、全体にもう少し爽やかさ抜けの良さは欲しい気がする。ただし楽器間のバランスなどは申し分ない再生音だ。>

(CD)<ワインライトでは低域はLPのワインライトよりもっと重くなる一方、シンバルやハイハットといった楽器は鮮明に出はじめ、サックスの音色はなかなか良い。ただ切れは今一つだ。>


なにか、もどかしさを感じる評論です。なんでもっと素直にソフトのエッセンスが再生されないのか? といったもどかしさです。では次のアンプの評論を見ていきましょう。



オーディオ評価いろいろ①

前述のSX-737についてかなりの高評価をしましたが、一般的なオーディオ評論では45年前のレシーバーなど評価外というか、箸にも棒にもかからないのは当然です。そんなものを評価してしまったら”進歩”の否定ですし、新製品など売れなくなってしまいます。確かに音の質感・クオリティでは、冷静な比較をするとさすがに古いと言わざる負えなくなる部分もあるのは確かです。やはり進歩はしているのですが、その進歩の方向が、音楽を生き生きと奏でる方に行っていないのが問題です。音楽の本当に大事なエッセンスが失われているような感じなのです。それを逆に高評価してしまっているのだから困ったもんです。

そんな音質評価(オーディオ評論)の中で、ちょっと違ったニュアンスのある評論も存在するので、これからその一部を紹介していきたいと思います。言わば、評論の評論です。

笠木修治氏(オーディオアクセサリー誌㉛/1984年WINTER号)

これはもう35年も前のオーディオ専門誌での比較テスト記事(スクランブルテスト/プリメインアンプ)です。神崎一雄氏とともに最新のプリメインアンプをテストしています。こういうテストの場合、大抵はクオリティの優劣は余りつけず、音質傾向の違いやソフトとの相性を示すことが多いものです。つまり、どこか各製品に気を使っているというか、けなすということは滅多にしません。ところが、この記事での笠木氏は実に端的に正直に製品の本質を言い表しているのです。ちょっと言い過ぎではないかと思うくらいです。では記事の内容を見ていきましょう。

テストアンプ(一部):ヤマハ/A-750
              オンキョー/A-817RS
             デンオン/PMA-760             
             サンスイ/AU-D607Gextra
             パイオニア/A-150
             サンスイ/AU-D907Gextra

以上、何れも売れ筋の製品で、価格は上から4機種は7~8万円、A-150が10万円弱、AU-D907Gextraが18万円弱。

テストソフト: グローバー・ワシントンJr/ワインライト
         ビリー・ジョエル/イノセントマン
         北原理絵/危険な関係
         ザ・スクエア/脚線美の誘惑
         マリーン/マイ・フェバリット・ソングス


となっています。

さて、それではどんな音質評価が述べられているのでしょうか。







オーディオの不思議⑨

SX-737 vs KA-7300

では、いよいよ737の登場です。このアンプ(レシーバー)が特に優れているわけではありません。もっとも、40年以上故障せずに作動し続ける機器というのは、それなりに凄いと言わざる負えませんが。しかし、737のサウンドはそういうことではなくて、特有の魔力を持っているのです。

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対決するのは前述のKA-7300です。発表時期も同じころ、1974年~1975年です。

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使用ソフト: ベンチャーズ、バッハ、モーツァルト、ショスタコーヴィッチ、アバ、エイス・オブ・ベイス、 スティーヴィー・ワンダー、The 80s Hits、女性ジャズボーカル、他

まず、7300から聴いてみる。ベンチャーズでは現代のアンプに比してどこかネットリとした質感があり、音楽が有機的に聞こえる。色合いはあっさりとして品はいい。もう少し濃くてもよいだろう。クラシックでは音の重心がやや低く、そのため音楽が安定して聴こえる。一方、どこか保守的な印象もあって、面白みや躍動的な演出はあまり感じられない。

特にポップスを聴くときにそれは顕著で、大人っぽい雰囲気は出るがワクワク感に若干欠ける。これが女性ジャズボーカルを聴くと、しっとりとした色気が感じられいい。全体的に生真面目な印象がある音質で、いぶし銀の味わいがある。

次に、737で聴きます。

まず、聴いた瞬間、ハッ!とする。なにか別の感覚が生起する。この感覚をどう説明したらいいかわからない。今まで潜在していたものが急にワッと浮かび上がってきたような感じなのだ。

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特に”ベンチャーズ・プレイズ・サザン”をこれほど躍動的に、そして皮膚に感じるレベルで表現できるアンプも少ない。何というか、ロックミュージックが本来持っている猥雑性・不良性がいやらしいほど出てくる。良識や理性ではない、ある種の下卑た感覚を刺激してくるのだ。逆に言うと、他の大抵の(特に現在の)アンプはなんでこの美味しい要素が失われてしまうのだろうと思う。このことはとても大事な事だ。

オーディオ誌などでの批評では、こういう要素は決して評価されません。この要素が実は音楽を聴く上では決定的に重要なものであるのにです。評価されるのは、解像度だとか音の分離感などの物理特性面の性質です。いわば、点数の付けやすい項目に評価が集中するわけです。音楽全体として感じられるパワーや魅力は無視されがちです。結果として、優等生的な製品が高評価となり売れるというわけです。

ミュージック・パワーとは何かがわからないと、音質評価は偏ったものになる!   ということです。




オーディオの不思議⑧

KA-7300 vs KA-990V~総論

ここまで色々とこの両機を比較してきたわけですが、大雑把に分かって頂けたのではないのでしょうか。簡単に言ってしまうと、990は、性能は確かに向上しているが、スチル写真のように静的でやや単調に感じられてしまうということです。これが7300となると、少し雑味が出るのですが、ダイナミック(動的)で生き生きとした音楽の本質をうまくとらえていている再生音と言えます。この差をどうとらえるかはそれぞれの感性でしょうが、筆者としては断然7300の方を推します。音楽と本気で向き合えるからです。990はむしろBGM的にサラリと聴くのに適しています。

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こうしてみてくると、やはり70年代アンプと80年代アンプの本質的な差異があることが分かります。同じメーカーでさえこれだけの違いがあるのですから、これが別のメーカー製品となると、別種の差が生じてくるのは当然と言えます。

では次に、初めに戻って、SX-737 との比較に入っていきます。

オーディオの不思議⑦

KA-7300 vs KA-990V 続き

ところで、聴く音楽によってオーディオ装置の評価が変わるのはよくあることです。大抵のオーディオ製品は、それが作られた頃に流行っていた音楽ソフトに合わせて音決めがされているようです。なので、例えば70年代の製品が70年代に録音された音楽ソフトに合うのは当然と言えます。

70年代から80年代にかけての音楽の変化というのは、電子楽器が増えてきたことが一番大きいと言えます。だから、990もそういった変化に対応しているはずなので、今度は80sポップを聴いてみます。

☆ソフト/スティーヴィー・ワンダー~ウーマン・イン・レッド
      The 80s (Best Hits)

KA-990Vで聴く。80sの楽曲に顕著な、人工的な味付けの音色がよく出る。しかも決して下品にならずに、パステルカラー風に表現される。初期の無機的ともいえるデジタル録音が特徴の”ウーマン・イン・レッド”のデッドなサウンドがそのまま出る。やはりこういうソフトにはよく合う。
しかし一方で、特に低域の”ほぐれ”が余り良くないというのか、ややぶっきら棒な印象も気になる。もう少し丁寧な低域表現が欲しいところである。他の要素が良いだけに残念である。音楽の充実感というのか、生々しさが物足りなく感じる。透明感・音場感などは優秀で、聴いていて気持ち良い。

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ここでKA-7300に切り替えると、990の不足要素がちゃんと補われていて素晴らしい。聴きごたえのあるサウンドに感動すら覚える。ただ、中高域のさっぱりしたキレイさは少し失われる。ソフトの無機的な音色が逆に生命感のある有機的サウンドになるのだ。これを良しとするかどうかは好み次第である。シンセの音も、まるで生楽器のように聴こえるから面白い。ここら辺は難しい所だ。

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オーディオの不思議⑥

KA-7300 vs KA-990V/ポップス他

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さて、本格対決に入ります。音の中に入り込んでいきます。

☆ソフト/ベンチャーズ・プレイズ・サザン~TSUNAMI

このCDは日本びいきのベンチャーズが、サザンの曲を彼らなりの解釈で演奏したものです。割と原曲に忠実に演奏されていて違和感はないのですが、なにせもうとっくに還暦を過ぎた彼らですから、若々しくシャキッとした演奏というより、しっとりと味わいのあるテイストになっているのが特徴です。雰囲気のある丸みを帯びたサウンドである一方、エッジもしっかりと立っています。そこらへんが表現されればと思います。

まず、KA-990Vで聴いてみる。一聴してして何の不足もない。細かい音もよく拾い、実にそつのないバランスの良いサウンドである。楽曲がキレイに流れる。気持ちの良いパフォーマンスだ。一方、少しぐいぐい来る魅力に乏しい。聴き手に刺さる表現ではないのだ。

そこで7300にチェンジ。まず感じるのは、やや音が粗いというか、990に比して透明感・解像度・音場感などの要素が少しずつ後退する。つまり、音が古いということなのだが、聴いてて別の要素も感じ始めるのでオーディオは面白い。一言でいうと”ガッツ”のあるサウンドというのだろうか、音楽全体のミュージックパワーが格段に向上するのだ。だから次第に音楽に乗ってくる。特に低音の躍動感にワクワクし出す。そうなると、細かい要素はあまり気にならなくなる。音楽を聴く上での大事な要素は別にあるのだ。

ベンチャーズのシンプルなスタイルの演奏が、7300で聴くとまるで自分がその中に入っているかのような感覚で聴こえてくる。特に低域の生々しい躍動感がそう感じさせる重要な要素となっている。逆に990では、その部分が良く言えば品よくなってしまい、サザンの曲の猥雑さや退廃性が希薄になる。落ち着いた保守的な印象に終始する。肌で感じる空気感というか、音の匂いがしないのだ。常に冷静に客観的に鳴っている感じ。

そしてもう一つ付け加えると、相互に比較しながらしばし時間が過ぎると、990は音質にほとんど変化はないのに対し、7300は前述のマイナス要素(透明感・解像度・音場感の不足)が驚くほど改善されて、聴き違えるほどの変化が現れる。こうなると比較どころではなくなる。990は性能は良いのだけど、音楽に没入している身にとっては何だか役不足に思えてしまうのだ。「お引き取り下さい」と告げたくなるくらいである。なんだか義務でいやいや再生しているようにすら感じられる。

7300は益々音楽に乗ってくる。体に訴えてくる。比較テストは忘れてしまう。。。

どうでしょうか?  

音楽を聴く上で重要なエッセンスを少しは感じていただけたのではと思うのですが。
こういうレベルでのオーディオ評はほとんどないことにお気づきだと思います。
音の微細なレベルでの性能評価に終始する評論がほとんだと思わないでしょうか?

つまり⇒オーディオはその本質的な要素ではほとんど進歩していない。否、むしろ退化している。⇒ということです。






オーディオの不思議⑤

比較テストですが、あまり厳密なものではありません。あくまで音楽ファンの日常のラフな使用においてのそれです。方法としては、1曲ごとにつなぎ変えるのではなく、あるCDから選択した何曲かを連続して聴いて、全体的な音の印象・感触を掴んでからアンプをチェンジして同じように聴くというものです。

その時に、テスターとして音の微妙な違いを聴き分けるというだけではなく、音楽に入り込んで、全体的な体験としてそのアンプの音世界を感じるということです。こうすることで、分析では分からないアンプのエッセンスを掴めると思うからです。ある意味、人間の人格を見定めようとする行為に似ています。

KAー7300のファースト・インプレッション/クラシック

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まず、空間表現がパッと強く感じられる。音像より先に、その音像を取り巻いている空間が印象的に表現される。楽器の位置関係(あくまで録音上のものだが)がよくわかる。これが例えばピアノ協奏曲のようなソフトではプラスに作用する。広がりがあって気持ち良い雰囲気で聴かせる。ただ一方で少し不満も出る。音色が単調なのだ。色彩感がやや薄く、どこか単色のグラデーションのような感じ。だからイマイチうっとりするような感興に乏しい。質感はとてもよいだけにやや残念な要素である。

この傾向はゴールドベルクにおいて更に顕著になってくる。ピアノ独奏なので、空間性よりも微妙な音色が大事なのだが、骨だけのややぶっきら棒な音に感じられる。なにか芸術的というより、科学的といった感触。だから音楽にのめり込めない、分析的なサウンドに思えてならない。グールドの鼻歌もしっかり聞こえて面白いのだが、そこが逆に協調されてしまい興醒めになる。ある意味オーディオ的なサウンドで、むしろマニアには喜ばれる傾向と言える。低域方向は雄大に表現されるが、やや大味で、もう一つの質感が欲しい。


それでは10年後の製品はどうだろうか?


KA-990Vのファースト・インプレッション/クラシック

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ピアノ協奏曲を聴く。空間表現は同じようによく感じられ、同一メーカーであることが分かる。ただこちらの方が、繊細微妙な表現に長けている。きめ細やかで洗練されている。この要素は明らかに10年新しいだけある。一方、やや大人しいというか、高解像度の反面コントラストは浅く、野性味に欠ける。

グールドのピアノはキレイで気持ち良い。音がクリーンで雑味がない。ただ、もう少し音の芯が感じられると充実感が高まる。都会的であまり汗臭くない音というのだろうか。殺菌された音のように感じられる。

7300と似た点は、やはり音色が薄いので色彩感に乏しいというところ。これはこのメーカーの特徴であり個性であるのだろう。よくトリオ・ケンウッドの音質は「透明感」「高解像度」「硬質」「高忠実度」などと評されることが多いのだが、むしろ音色の乏しさがそのように聞こえてしまうのではないかとさえ思うのだ。もっともここら辺は聴く側の主観であり好みなので一般化はできないかもしれない。


さて、ここまで全体的な印象を綴ってきましたが、ある程度両者に共通の傾向を感じてもらえたでしょうか?
次に、もっと深くこの二つのアンプの本質に迫りたいと思います。









オーディオの不思議④

☆KA-7300 vs KA-990V

さて、同一メーカーの10年差の音の変化を感じてみましょう!

使用ソフト: モーツアルト/ピアノ協奏曲第26番
 (CD)    バッハ/ゴールドベルク変奏曲/グレン・グールド(1981)
        アバ/ザ・ゴールド
        ベンチャーズ/ベンチャーズ・プレイズ・サザン~TSUNAMI
        エイス・オブ・ベイス/CRUEL SUMMER
       
        以上の他に各種ポップス・ジャズ・ロックの(CDよりダビングの)カセットテープを使用。

使用ハード: CDプレーヤー/NEC CD-816
        カセットデッキ/ソニー TC-K222ESG
        スピーカー/ダイヤトーン DS-200Z
        ヘッドフォン/ローランド RH-A30


大勝負!

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オーディオの不思議③

☆時代による音の差

SX-737の音質を語る前に、一つ比較として、時代によるアンプの音の差を見ていきたいと思います。
同じメーカーでの比較がいいと思いますので、ここで二つのアンプを紹介します。

 トリオ(TRIO) KA-7300 と ケンウッド(KENWOOD) KA-990V です。 

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ケンウッドはトリオの海外向けブランドで、80年代前半に正式な社名になりました。無線機やカーステレオでも有名な老舗メーカーです。60~70年代にはオーディオ御三家として”サン・トリ・パイ”(サンスイ・トリオ・パイオニア)と呼ばれていたものです。

KA-7300は1975年の製品。定価65,000円。当時、パイオニアのSA-8800とライバル関係にありました。その音色で人気だった8800に、左右独立電源によるセパレーションの良さで向こうを張っていました。結果的に7300の優勢となり、大ベストセラーになった製品です。

KA-990Vは丁度7300の10年後、1985年の製品で定価は79,800円。これも当時この価格帯での大戦争の中核機でした。他にサンスイ、オンキョー、ヤマハ、パイオニア、ビクター、デンオン、それにソニーも参入して大変な戦いであったわけです。990はその中にあって、デザインのカッコよさと洗練された音質で大人気でした。
この同一メーカーの10年差(70年代と80年代)を比べてみようというわけです。

オーディオの不思議②

☆昔のアンプのどこがいいのか?

SX-737の音に感心して、それから様々な音楽を楽しんできました。中学生だったので、歌謡曲から次第に洋楽のポップス・ロックへと興味が移りました。また、クラシックもそれなりに好きで、あれこれと聴いていました。ソースは主にFMからのエアチェックです。アナログ・レコードは高価なので、年に3~5枚くらいしか購入できません。レコード・プレーヤーは、テクニクスの”SL-1600”を購入して、その使い勝手、デザインのカッコよさにうっとりしていました。また、しばらくしてオンキョーの傑作スピーカー、”M6”を購入し、これで一通りシステムが揃ったわけです。

この過程で、音質が気になることはほとんどありませんでした。それほど、TC-4300SDSLー1600SX-737M6に違和感がない(満足していた)ということなのでしょう。今思うと、ものすごい良いバランス・相性の組合せだったのです。(この”相性”の問題は重要なので後に話題にします)

特にSX-737は音楽をより生き生きと感じさせる魔力のようなものがあり、気に入っていました。決してハイ・フィデリティ(高忠実度再生)というわけではありませんでしたが、音楽を聴く上での心地よい音作りがなされていて、見事というほかありません。

では、その音の良さの質はどういうものだったのでしょうか?
そのことをお話ししていきたいと思います。

オーディオの不思議①

☆ただ古いだけなのか?

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そうして我が家に来たパイオニア・レシーバーのSX-737。さっそく使ってみました。と言っても外部入力機器はソニーのカセットデッキ”TC-4300SD”しかないので、FM放送からエアチェックしたテープやミュージック・カセットを聴いたわけです。

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実はまだスピーカーは未購入でした。なので、ヘッドフォン(HP)で聴いたわけです。HPは二つ持っていました。一つはソニーの"DR-6M"、ダイナミックでメリハリの効いた音の頑丈な製品でした。もう一つはオーレックス(東芝)の”HR-710”、コンデンサー型のちょっと変わった製品で、とても洗練されたデザインで、音も繊細微妙でした。

ともかく、TC-4300SDからSX-737のテープ端子につなぎ、ヘッドフォンで聴いたのです。それまで、カセットデッキのHP端子から聴いていたわけですが、それとどのくらい違うのか?

そこから流れる音は、実に艶やかで色彩豊かな音、ヴィヴィッドでブリリアントなサウンドでした。
この音が、その後の筆者のサウンド感覚を決定づけるものになったわけです。